2016/12/19
成田空港から大分へ日帰りの旅。国木田独歩が愛したという大分県佐伯市の佐伯城址(城山)へ行きました。当日は雨模様で、霧に覆われ、あたかも武将が現われそうな幻想的な風景でした。
Contents
佐伯城
佐伯市という呼称は「さえき」ではなく、「さいき」といいます。宮崎県延岡市と接する大分県の南端に位置します。戦国期の国名でいえば、豊後と日向の境目の位置にあります。
佐伯市街のほぼ中央、標高144mにシイの木で覆われている「城山」があります。
明治の文豪国木田独歩は「大木暗く繁った山であまり高くはないが甚だ風景に富んでいました」と記し、「余が初めて佐伯に入るや先ずこの山に心動き、余巳に佐伯を去るも眼底其の景容を拭い去る能わず、この山なくば余には殆んど佐伯なきなり。」とさらに記しています。
佐伯城概要
●慶長11年(1606年)、日田の隈城から移封された毛利高政によって築城される。
●天守閣は、築城後ほどなく火災によって消失、わずかに残った隈櫓・土塀なども廃藩置県の際に取り壊される。
●遺構 天守台、櫓門(現存)、石垣、郭等
●別名 鶴屋城、鶴ヶ城、鶴城、鶴谷城
櫓門(三の丸)
櫓門は、豊後佐伯城(鶴屋城)の現存する唯一の遺構です。佐伯市の観光の最大のシンボルと言えます。昭和51年に大分県重要文化財指定を受けました。毛利家第三代当主高尚は、櫓門を創建し、山上の鶴屋城から三の丸に住まいを移して藩政の中心としました。1637年(寛永14年)のことと伝えられています。
城山山頂までの登山道
城山頂上までの道のりには、『独歩碑の道』、『登城の道』、『翠明の道』、『若宮の道』と、4つの登山道があり、それぞれ四季折々の風景が楽しめます。
独歩碑の道を登り、山頂へ
城山登り口
史跡 豊後佐伯城址案内板
城山山頂の城址は、海抜140m、遠く近く南豊の山々をめぐらし、番匠川は曲がりくねって佐伯湾にそそぎ、はるかに豊後水道を隔てて、四国の島山が霞んで見える。眼下には県南の政治・経済・産業・文教の中心都市、人口5万の佐伯市街がひろがり、展望絶景、歩いて15分で登れる景勝の地である。
慶長6年(1601)4月、日田より入封の初代毛利高政は、この地を相して佐伯荘2万石の本拠地と定め、まず山頂に築城の工を起こし、城下町の建設にかかった。
三層の天守閣を持つ本丸を中心に、二の丸・西の丸を西南に伸ばし、北の丸を東北に広げ、あたかも舞鶴の翼を張った姿に自ずと鶴屋城と名づけられ、また鶴城と呼ばれた。
城は4年後の慶長11年に完成したが、ほどなく失火により本丸・二の丸を失い、その復興をあえて行わず、寛永14年(1657)、山麓に三の丸を開き、大いに殿館を営んで以来200数十年、佐伯藩政はもっぱらここで執られた。それは、山城の不便さを避けてのことである。そして明治初年の版籍奉還・廃藩置県によって廃城となった。今は城郭の遺構としては僅かに三の丸櫓門を残すだけであるが、なお城跡を示す石垣はほとんど完全に残り、城址公園として市民に親しまれている。
独歩碑(二の丸)
釣りバカ日誌のロケ場所
釣りバカ日誌のロケが行われた場所です。佐伯市街地と佐伯湾を望むシーンです。
佐伯市街・佐伯湾を望む
一瞬、霧が晴れ、佐伯市街・佐伯湾を望むことができました。
本丸跡
本丸跡の祠
独歩文学碑
本丸と二の丸の間には堀切が設けられています。
現在残っている石垣から、築城当時の城郭の勇壮さが偲ばれます。
登城の道を通り下山
城山の自然
城山の林はシイ・カシ・タブなどから成る照葉樹林です。冬から春にかけてヤブツバキが赤い花をつけ、メジロやウグイスが花を訪れます。2月から3月にかけて、タイミンタチバナ・カクレミノ・イズセンリョウなどの低木が目立たない花をつけ、谷沿いにはサツマイナモリが白い花を咲かせます。5月にはシイの花が城山を黄金色に染めるように咲きます。
シジュウカラやキレンジャクなどの小鳥が木々の間でさえずり、ニイニイゼミやアブラゼミの鳴き声が聞こえると、夏はもう目の前です。夜には林の中にヒメボタルの乱舞を見ることもできます。
秋にはどんぐりやシイが実り、頂のコナラやケヤキが黄色に染まります。
オオイタサンショウウオ(大分県指定天然記念物)は、城山で発見されたのが最初で、ここが標準産地となっています。
佐伯城址への情報・アクセス
城山 施設データ:
○ 所在地: 〒876-0831 大分県佐伯市大手町1丁目
○ 開館時間: 見学自由
○ 駐車場: 文化会館下市営駐車場(無料・大型可)
○ 休館日: 見学自由
○ トイレ: 有り(登山口左)
今日のひとこと
霧に包まれた佐伯城址は、とても雰囲気のある古城跡でした。独歩が愛した訳が、足を運んでみて肌で感じることができました。天気のいい日は、城山山頂から佐伯市街の向こうに、リアス式海岸や豊後水道、四国の山々まで見渡せるそうです。また、佐伯寿司街道キャンペーンなどやっていて、美味しい海の幸を頂けるのも嬉しいですね。大分日帰りの旅は、慶長の時代のお城にタイムスリップしたような不思議な感覚の旅でした(@_@;)