2016/11/11
ダ・ヴィンチの名画に隠された謎が世界中で一大センセーションを巻き起こした『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)、ヴァチカンを舞台にガリレオの遺した暗号を解き秘密結社イルミナティの陰謀に迫った『天使と悪魔』(2009)。そして2016年、シリーズ第3弾『インフェルノ』がついに10月28日(金)に日米同時公開された。
数々の謎を解き明かしてきた宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)が、人類滅亡の恐ろしい計画を企てている生化学者ゾブリストが詩人ダンテの叙事詩「神曲」<地獄篇>に隠した暗号の謎に挑む。
ゾブリストは「このままでは人類は100年後に滅びてしまう」と言われるほどの深刻な人口増加問題の過激な解決策として、人類の半数を滅ぼす為のウィルスを生み出す。そしてダンテが予言した人類の“地獄”の未来図=<地獄篇>になぞり計画を実行する。「100年後の人類滅亡」または「今人類の半分を滅亡させて生き残る道」どちらが正しい未来なのか?宗教象徴学の天才に対して、生化学の天才が突き付けた挑戦状。ラングドン教授は地獄篇の暗号に挑み、その選択を迫られる。
主人公のハーバード大学宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授にトム・ハンクス。ラングドンとともに謎を追う美貌の女医シエナにフェリシティ・ジョーンズ。監督はシリーズ全作品を手掛ける監督ロン・ハワード。原作は、シリーズを手掛ける大ベストセラー作家ダン・ブラウン。
『ダ・ヴィンチ・コード』から10年が経った2016年、世界滅亡へのカウントダウンが始まった今、ロバート・ラングドン教授が全世界を揺るがす巨大な陰謀を解き明かす!
映画に登場するダンテの「神曲」・ボッティチェリの「地獄の見取り図」について、調べてみることにした。
Contents
陰謀を解き明かすアイテム ダンテ「神曲」地獄篇
ダンテ・アリギエーリについて
●ダンテ・アリギエーリ(1265年 -1321年9月14日)
●イタリア都市国家フィレンツェ出身の詩人、哲学者、政治家。
●イタリア文学最大の詩人
●ルネサンス文化の先駆者
1265年、イタリア中部にあるトスカーナ地方のフィレンツェで、金融業を営む小貴族の父アリギエーロ・ディ・ベッリンチョーネとその妻ベッラの息子として生まれた。ダンテの先祖には神聖ローマ皇帝に仕え、第2回十字軍に参加して1148年にイスラム教徒と戦い、戦死した曽々祖父(1091- 1148年頃)がいることは『神曲』天国篇第15歌の第133行から第135行で明らかになる。
ダンテは生後、聖ジョヴァンニ洗礼堂で洗礼を受け「永続する者」の意味を持つドゥランテ・アリギエーリ(Durante Alighieri)と名付けられた。なお「ダンテ(Dante)」は、ドゥランテの慣習的短縮形である。
ダンテとベアトリーチェ
ダンテは、9歳の時にベアトリーチェに出会い、以来生涯彼女を愛し続けた。ベアトリーチェは、24歳の若さで病死したが、彼女の死を知ったダンテは狂乱状態に陥り、キケロやボエティウスなどの古典を読み耽って心の痛手を癒そうとした。そして生涯をかけてベアトリーチェを詩の中に永遠の存在として賛美していくことを誓い、生前の彼女のことをうたった詩をまとめて『新生』を著した。その後、生涯をかけて『神曲』三篇を執筆し、この中でベアトリーチェを天国に坐して主人公ダンテを助ける永遠の淑女として描いた。
『神曲』に登場するベアトリーチェに関しては、実在した女性ベアトリーチェをモデルにしたという実在論と、「永遠の淑女」「久遠の女性」としてキリスト教神学を象徴させたとする象徴論が対立している。
●実在のモデルを取る説では、フィレンツェの名門フォルコ・ポルティナーリの娘として生れ、のちに銀行家シモーネ・デ・バルティの妻となったベアトリーチェ(ビーチェ)を核として、ダンテがその詩の中で「永遠の淑女」として象徴化していったと見る。
●非実在の立場を取る神学の象徴説では、ダンテとベアトリーチェが出会ったのは、ともに9歳の時で、そして再会したのは9年の時を経て、2人が18歳になった時であるというように、三位一体を象徴する聖なる数「3」の倍数が何度も現われていることから、ベアトリーチェもまた神学の象徴であり、ダンテは見神の体験を寓意的に「永遠の淑女」として象徴化したという説を取る。
いずれにせよ、ベアトリーチェは、愛を象徴する存在として神聖化され、神学の象徴ともあると考えられている。地獄と煉獄を案内するウェルギリウスも実在した古代ローマの詩人であり、神曲の中では「理性と哲学」の象徴とされている。
「神曲」とは
「神曲」は、ダンテ自らが主人公となって死後の世界を体験する壮大な物語である。著名な歴史上の人物が、生前犯した罪によって地獄に落ちた様子が描かれ、その生き方が何であったのか、どこで失敗して地獄に落ちたのかを突き詰めてゆく叙事詩である。
背景
ダンテが『神曲』を世に出した背景には、当時のイタリアにおける政争と自身のフィレンツェ追放、そして永遠の淑女ベアトリーチェへの愛の存在が大きい。また、ダンテは、人生における道徳的原則を明らかにすることが『神曲』を執筆した目的であると記している。
構成
●「神曲」は、地獄篇、煉獄篇、天国篇の3部で構成されている。
●長編叙事詩であり、聖なる数「3」を基調とした極めて均整のとれた構成から、しばしばゴシック様式の大聖堂にたとえられる。
●イタリア文学最大の古典。
●当時の作品としては珍しく、ラテン語ではなくトスカーナ方言で書かれている。
あらすじ
暗い森の中に迷い込んだダンテは、そこで古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、彼に導かれて地獄、煉獄、天国と彼岸の国を遍歴して回る。ウェルギリウスは、地獄の九圏を通ってダンテを案内し、地球の中心部、魔王ルチーフェロの幽閉されている領域まで至る。そして、地球の対蹠点に抜けて煉獄山にたどり着く。ダンテは、煉獄山を登るにつれて罪が清められていき、煉獄の山頂でウェルギリウスと別れることになる。そして、ダンテは、そこで再会した永遠の淑女ベアトリーチェの導きで天界へと昇天し、各遊星の天を巡って至高天(エンピレオ)へと昇りつめ、見神の域に達する。
ボッティチェリの「地獄の見取り図」
「神曲」の地獄を具体的に描いて示したのが、ボッティチェリの「地獄の見取り図」である。
●その地獄は地下へ細く伸びるじょうご型で下へ行くほど罪が重いというもの。
●地獄の世界は、漏斗状の大穴をなして地球の中心にまで達し、最上部の第一圏から最下部の第九圏までの九つの圏から構成される。
地獄界の構造
- 地獄の門 – 「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」の銘が記されている。
- 地獄前域 – 無為に生きて善も悪もなさなかった亡者は、地獄にも天国にも入ることを許されず、ここで蜂や虻に刺される。
- アケローン川 – 冥府の渡し守カロンが亡者を櫂で追いやり、舟に乗せて地獄へと連行していく。
- 第一圏 – 洗礼を受けなかった者が、呵責こそないが希望もないまま永遠に時を過ごす。
- 地獄の入口では、冥府の裁判官が死者の行くべき地獄を割り当てている。
- 第二圏 愛欲者の地獄 – 肉欲に溺れた者が、荒れ狂う暴風に吹き流される。
- 第三圏 貪食者の地獄 – 大食の罪を犯した者が、ケルベロスに引き裂かれて泥濘にのたうち回る。
- 冥府の神プルートーの咆哮。「パペ・サタン・パペ・サタン・アレッペ!」
- 第四圏 貪欲者の地獄 – 吝嗇と浪費の悪徳を積んだ者が、重い金貨の袋を転がしつつ互いに罵る。
- 第五圏 憤怒者の地獄 – 怒りに我を忘れた者が、血の色をしたスティージュの沼で互いに責め苛む。
- ディーテの市 – 堕落した天使と重罪人が容れられる、永劫の炎に赤熱した環状の城塞。ここより下の地獄圏はこの内部にある。
- 第六圏 異端者の地獄 – あらゆる宗派の異端の教主と門徒が、火焔の墓孔に葬られている。
- 二人の詩人はミノタウロスとケンタウロスに出会い、半人半馬のケイロンとネッソスの案内を受ける。
- 第七圏 暴力者の地獄 – 他者や自己に対して暴力をふるった者が、暴力の種類に応じて振り分けられる。
- 第八圏 悪意者の地獄 – 悪意を以て罪を犯した者が、それぞれ十の「マーレボルジェ」(悪の嚢)に振り分けられる。
- 第九圏 裏切者の地獄 – 「コキュートス」(Cocytus 嘆きの川)と呼ばれる氷地獄。同心の四円に区切られ、最も重い罪、裏切を行った者が永遠に氷漬けとなっている。裏切者は首まで氷に漬かり、涙も凍る寒さに歯を鳴らす。
(参考メディア:ウキペディアより)
今日のひとこと
映画は、スリルとアクション、スピード感があって、手に汗にぎりながらストーリーの中に入り込んでいました。
舞台が、フィレンツェ・ヴェネチア・イスタンブールといった観光地を巡っていくので、旅好きの私には、それだけでも十分楽しめました。
世界史で単語だけを覚えたダンテ「神曲」でしたが、その内容が死後の世界を体験する壮大な物語であること・ベアトリーチェという「永遠の淑女」の存在を、今回はじめて知りました。
また、ボッティチェリの「春」「ヴィーナスの誕生」からは想像できない「地獄の見取り図」を、ボッティチェリが描いていることに驚きました。